天然繊維ネット(ヤシネット)
研究の背景
この天然繊維の研究グループでは、在来知からサトウキビの茎の繊維を巻いて伝統的な網を作る技術を持つボネ・ボランゴ県の人々、地方政府、SRIREPプロジェクトやゴロンタロ州立大学の研究者、エスペックミック株式会社(愛知県)などの民間企業と協力して、貧困問題の解決のための持続可能な新産業の開発を目指しています。 現在、ボネ・ボランゴ県西トゥラボロ村では、鉱山で働く人たちを含めた村人たちが「ムーピーヤ・グループ」を立ち上げ、私たちと一緒にサトウヤシネットを使った商品を作っています。
今、世界は脱プラスティックをめざし、天然繊維を使う社会へと変わろうとしています。 できあがったネットの販路や活用方法については、わたしたちが一緒に活動しているボネボランゴ県と国立ゴロンタロ州大学のメンバーと一緒に検討しています。主には、斜面崩壊や土砂流出を防ぐためにインドネシア国内外で利用される予定です。
- 天然繊維の歴史・手法・デザインの学習
- 天然繊維の有用性についての地域住民との対話
- サトウヤシ繊維のネットに関する技術的・デザイン的課題の明確化
- TDCOPの活動が、伝統的な生業とその後継者の持続的発展に直結するかどうかの解明
- TDCOP結成の効果がどのように社会に伝わるのかの解明
- 天然繊維製品の新規デザイン開発、市場開拓、改良
水銀ゼロ社会を目指して
今、ゴロンタロでは、水銀を使用する金鉱山での仕事から、天然繊維を用いた新たな生業への転換が始まろうとしています。
地球研SRIREPプロジェクトの目標は、貧困問題を背景とするASGMによる水銀汚染問題の解決の道筋を明らかにすることです。
私たちプロジェクトメンバーは、日々地域住民の方々と一緒に実践を進めています。
わたしたちのミッション
なぜインドネシアの片田舎で、サトウヤシの繊維を使ったネット作りに私たちが関わるのか。村人の日々の暮らしと生業から紐解きます。
貧しさから違法な金鉱山で危険を犯しながら生きていくことが、当たり前ではないことを知ってほしいのです。
子どもたちの未来に、新しい可能性があることを伝えたいのです。
進捗状況
2022年1月
このTDCOPグループ名は「Dunula Jaring Kehidupan」(文字通り「サトウヤシネットからの命」)という名前をつけられました。
2022年2月
2022年2月現在、このTDCOPに関わる主要なステークホルダーは、Tolango、Ambara、Batudaa Pantai、3つの村の人々です。さらに将来的にはTamboo村も参加する予定です。
2022年2月19日に、地域におけるプラスチック素材の使用を削減することを目的とした、プラスチック汚染に関するセミナーを実施しました。
上記3つの村で製作した網20枚が日本に到着し(2/28)、エスペックミック株式会社に送られました。3月末までに合計60枚のネットが日本に到着する予定です。
2022年4月
2022年4月19日、エスペックミック株式会社・山口勉氏が総合地球環境学研究所を訪問し、車道の山肌に落石防止用サトウヤシネットネットを試験設置しました。今回の試験設置は、高さ1m×30cm、幅5m×30cmの大きさです。
榊原プロジェクトリーダーは、現在設置されているプラスチック製ネットを将来的には環境にやさしいサトウヤシネットに変更する予定です。プラスチックごみ問題の削減や、大きな課題となっているマイクロプラスチック問題にも取り組むためです。